くるりのライブツアー「線」旭川公演に行ってきました!
10年以上に渡りライブを観続けていますが、何度観ても毎回新鮮な感動を与えてくれるくるりは、僕にとって特別なバンドです。
ライブを観て気付いたことや感じたことをいくつかピックアップして、くるりの魅力に迫ります。
(※以下ネタバレ要素あります)
音源未発表の新曲や「東京」の新アレンジも披露!結成20年を超えても挑戦し続けるくるりのライブツアー「線」
「その線は水平線」発売記念ツアー
ライブツアー「線」は、くるり通算31枚目の新曲「その線は水平線」の発売を記念して行われている全国ツアー。
「その線は水平線」は各種デジタル配信のほか、10,000枚限定シングルとしてCDで、レコードの形態でも7インチ・アナログ盤の『春を待つ/その線は水平線』で発売されるなど、かなり気合の入ったリリースをされています。
NHK Eテレ 「又吉直樹のヘウレーカ!」のエンディングテーマとしても採用され、モデルのSUMIRE(Charaと浅野忠信の実娘)が主演のミュージックビデオも公開されています。
トランペットのファンファン復帰後初のツアー
産休・育休でライブ活動を休んでいたトランペットのファンファンさんが復帰してから初の全国ツアーでもありました。
ファンファンさんが休んでいる間も、サポートメンバーとしてコーラスの人員を増やしたりギターを増やすなどして補っていましたが、生の管楽器がバンドのアンサンブルに入ることで雰囲気が変わることを改めて感じました。
今回のツアーではドラム、ベース、ギターボーカル、トランペット、キーボードの5人を基本に、サポートギターの2人が曲によって出たり入ったりする編成。
アンコールで披露された「ブレーメン」の正式メンバーのみによる最少3人から、最大では7人のメンバー編成でライブは行われました。
「東京」の新アレンジを披露
ライブ開始2曲目で披露されたくるりのファーストシングル「東京」ではアレンジが絶妙に変えられていました。
曲の中で繰り返し登場する象徴的なギターのフレーズが、間奏ではトランペットに置き換えられるなど、わかりやすいアンサンブルの変化もありつつ、個人的に一番グッときたのはサビのベースの変化。
「東京」のサビのコード進行は本来
E→B→F♯m7→Aadd9
E→B→F♯m7→Aadd9
という感じで、ベースも今まではほぼこれに従っていた*1のですが、今回は大胆に変えていて
E→E→E→E
E→E→E→E
というコード進行になっていました。
サビの最中にずっとEしか弾いていないわけではなく、微妙に違う音も間に入ったりはしていたんですが、大筋のコード進行はすべてE。
他の動きはあくまでEのおかずとして入れている感じでした。
これに対するギターなどの他の楽器のコード進行がどうなっていたかまでは判別できなかったのですが、少なくともベースはEゴリ押しでした。
このベースの変化によって、曲から受ける印象が一味もふた味も違うものになり、元々のアレンジを知っている僕のようなファンからすると音楽的な快楽が高まってめちゃくちゃグッときます。
ベースの「特定のコードゴリ押し」は佐藤さんの得意技
実は今回の「Eゴリ押し」のようなライブアレンジは、既にくるりの他の曲でもやっている方法論です。
くるりのライブ定番曲「ワンダーフォーゲル」においても、2番のAメロのコードで「A→Bゴリ押し」をやっています。
これは結構前(少なくとも10年くらい前)のライブから今に至るまでずっとやっているアレンジなので、DVDやYouTubeのライブ映像で確認することができます。
ベースの音作り、フレーズが現代的になっていた
引き続きベースの話が続きますが、
佐藤さんのベースの音作りとフレーズが以前と変わっていたように感じました。
2010年代後半の、最先端の洋楽の流れを汲んだベースを弾いているように感じて、それを具体的にいうと
- 「休符が効果的に多用され、直角的なベースライン」
- 「バンドアンサンブルの底辺を支える、倍音の整理された音作り」
という印象でした。
多めの倍音がきっちり狙い通り整理されてバンドのアンサンブルの一番低い帯域に横たわり、低音の気持ちよさを感じました。
休符がビシッと決まっていて、ぬるっと丸い休符というより、四角い休符というイメージ。
語弊がありそうですが、「いい意味でシンセっぽい」とも言えそうです。
佐藤さんのベーシストとしての心境の変化、バンド全体での「ベース」という楽器のポジショニングの再考があったのかなと思わされました。
LAでWonder Futureというアルバムを作ってみて思ったのは、キックとベースはもっと重心を下げないといけないなってこと。ベースが中域に寄ると、ギターがそれより高域に追い出される。そうするとボーカルとギターで奪い合う音域が狭まる。バンドは中域が大渋滞しがちというか。
— Gotch (@gotch_akg) 2017年11月5日
俺らもバンドもの録ると中域モコモコになる。5弦ベースとバリトンギターで対応中。
— 岸田繁 (@Kishida_Qrl) 2017年11月6日
ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤さんとくるり岸田さんがTwitterでしていたこの会話を思い出したりもしました。
バンドのアンサンブルは帯域の住み分けが重要だということを再認識しました。
プログレでインストの音源未発表の新曲「東京オリンピック」を披露
ライブの中盤では5曲の新曲も披露されました。
「東京オリンピック」「忘れないように」「ハイネケン」「春を待つ」「ニュース」というそれぞれ曲調の違う5曲。
特に印象的だったのは「東京オリンピック」。
個人的には「キングクリムゾンとメタリカが好きで、元々フュージョンバンドやってた人の曲」みたいな印象を受けたんですが、ツアーの他の公演で岸田さんは「ドリームシアター」の名前を出してたとか。
キングクリムゾンとメタリカの融合って、確かにドリームシアターって答えになるなと思いました。
岸田さんのInstagramで「東京オリンピック」の一部を聴くことができます。
くるりのみなさんがどうかはわからないんですが、僕の個人的な経験則でいうと思い切った曲調やアレンジをやるときは、作りながらめちゃくちゃ爆笑してます。
この曲も「これめちゃくちゃかっこいい!」とか「めちゃくちゃおもしれ〜!」とか言いながら、爆笑しながら作ったのかなあと想像したりしました。
新曲がどれも素晴らしい
「忘れないように」はめちゃくちゃシングルっぽいわかりやすい名曲。
「ハイネケン」はチオビタのCMに起用されてたくるりの楽曲群に近い印象でありながら、アウトロはギターが炸裂しまくっててライブ映えしまくりの爆上げ曲。
「春を待つ」はタイトルにぴったりのアコギ主体のスローな良曲。
「ニュース」はアルバム『言葉にならない、笑顔を見せてくれよ』の頃のくるりを彷彿とさせます。
くるりのライブは20年経っても変化し続ける
札幌にツアーで来るときはもちろん、ライジングサンロックフェスティバルといった夏フェスの舞台、くるりが主催し京都で毎年行われる「京都音楽博覧会」、大阪クラブクアトロでのライブなど、13年近くライブを観てきましたが、くるりは常に新しいライブの形を見せてくれます。
音源においても「Liberty & Gravity」「琥珀色の街、上海蟹の朝」「その線は水平線」といまだに超名曲を量産し続けています。
新しい音楽を、より素晴らしい音楽を生み出すことに正面から向き合い続けるバンドの姿勢には、同じミュージシャンとして学ぶことがあまりに多いです。
あなたの街の近くでライブがある際にはぜひ、その目で現在進行形で変わり続けるくるりの今を感じてみてください。
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2017年にベストアルバムのツアーを観にいった時の記事もあります。あわせてどうぞ。
*1:厳密にいうと2つ目のコード「B」は「F♯」的に弾いていて、ギターとの兼ね合いで分数コード的になってるけど、今回の件ではちょっとややこしいので割愛。