「ブリヂストン美術館展 石橋財団コレクションの精華」を北海道立近代美術館で観てきました!
この展覧会がどういった内容なのか、その魅力を紹介するとともに、個人的に感じた見どころと感想も書いていきます。
これからの方は情報の予習に、もう観にいったという方は自分の感想との違いを楽しんでみてください!
ルノワールやモネ、藤島武二の重要文化財など名品が北海道に上陸
タイヤメーカーとして有名なブリヂストンの創業者である石橋正二郎が自らのコレクションを公開したところから始まった「ブリヂストン美術館」。
石橋財団コレクションとも呼べるその収蔵品が北海道に上陸。
北海道立近代美術館と北海道立三岸好太郎美術館(mima)の2会場に合計84点もの作品が出品されています。
西洋近代絵画や日本近代絵画の名品、重要文化財も上陸
コロー、ルノワール、セザンヌ、ピカソをはじめとする19世紀から20世紀前半にかけての西洋近代絵画や、黒田清輝、藤島武二、藤田嗣治、岸田劉生、青木繁など明治から大正、昭和初期にかけての日本近代洋画の名品、重要文化財4点などが出品。
明治浪漫主義絵画の代表作である青木繁の《海の幸》が北海道に初上陸する点も注目です。
基本理念は「世の人々の楽しみと幸福のために」
石橋正二郎のモットーは「世の人々の楽しみと幸福のために」。
これはブリヂストン美術館の基本理念でもあります。
最初は個人のコレクションとして収集し始めた美術品でしたが、人々に楽しんでもらうため、癒しを感じてもらうため、1952(昭和27)年1月に石橋正二郎は美術館を開館させ、そのコレクションを一般公開します。
4年後には財団法人石橋財団を設立し、コレクションの大半を寄付したのでした。
知識がなくても観やすい!芸術運動ごとのカテゴライズ展示
北海道立近代美術館では西洋近代絵画と、重要文化財である藤島武二と青木繁の作品を展示。
北海道立三岸好太郎美術館には明治から大正、昭和初期にかけての日本近代洋画が展示されています。
近代美術館の西洋近代絵画については、「印象派」や「フォーヴィスム」といった芸術運動ごとに作品をカテゴライズして紹介。
絵画に関する知識がなくても、その場で絵画史を勉強しながら鑑賞を進めていくことができます。
【注意!】文字情報が膨大
少し注意したいのは、文字による情報量が膨大だということ。
すべての作家に経歴を紹介した文章が添えてあり、作品の紹介文もあるため、すべてをしっかり読んで理解しようとすると少し疲れてしまうかもしれません。
美術館側の気合いを感じる情報量ではありますが、疲れてしまう方はほどほどに読み飛ばすのもありだと思います。
「ブリヂストン美術館展 石橋財団コレクションの精華」の見どころ
個人的にグッときた作品や、そのエピソードなど、展覧会の見どころをご紹介します。
ピエール=オーギュスト・ルノワール『すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢』
ルノワールによって描かれたブリヂストン美術館の看板娘。
1873年にサロンに出品した『シャルパンティエ夫人とその子供たち』にも描かれている長女ジョルジェットが4歳の時の肖像画。
この作品は1877年の第3回印象派展に出品され、人気を集めたそうです。
少女のドレスや靴下で印象的な青色は、少女の目の周りの影の表現や、髪の毛や床の絨毯にも施されています。
肌の白色と頬のピンクの色づかいも絶妙です。
クロード・モネ『黄昏、ヴェネツィア』
モネといえば「積みわら」や「睡蓮」のイメージが強い方もいると思いますが、今回観たなかでも特に素晴らしかった一つがこの『黄昏、ヴェネツィア』。
29点制作されたという「ヴェネツィアの眺め」のうちの1点です。
これらの連作をシニャックは「モネの芸術の最高の表現だ」と称賛したそうです。
画面越しにはその凄さは伝わらないのですが、うねりを持った筆致と色合いがあまりに素晴らしすぎました。
アンリ・マティス『縞ジャケット』
下地に白を塗り、その白を生かした作品。
ジャケットや肌の白さが印象的ですが、背景との境目となる人物全体の輪郭部分にも残っている余白に作品の味わいを感じました。
単純な線描と平面的な色面による画面構成は、マティスが様々な絵画表現の実験を試みていた中で生まれたものだそうです。
美術の教養がない僕のような者からしたら一見「ちょっとしょぼくない?(威厳なくない?)」と感じちゃうような、かわいげのある作品ですが、ただ下手なわけではない独特な味わい深さがクセになります。
ラウル・デュフィ『オーケストラ』
暖かい色使いや柔らかな線で描かれたデュフィによる「オーケストラ」の連作のうちの1点。
マティスに感銘を受け画家を志したこともあり、『縞ジャケット』とも通じる「かわいらしさ」があります。
僕が初めて絵画の展覧会に行ってたくさんの絵を観た時、デュフィのこの独特のこの線描が明らかに他の画家たちの作風とは違っていて、笑ってしまったことを覚えています。
音楽の躍動感が伝わる曲線。
3,4本の簡単な線だけで描かれた奏者の顔から、音楽の楽しさや難しさが伝わってきます。
観てると心がほっこりして、ちょっと泣いちゃいそうになる作品で、やっぱりデュフィが好きだなと改めて思わされました。
ジョルジュ・ルオー『ピエロ』
「サーカスの陽気は一夜限りである」という考えのもと、サーカスの舞台に立っていない時間のピエロの憂いを表現した作品。
この作品を見て、第2会場の三岸好太郎美術館に収蔵されている三岸好太郎によるピエロの絵を思い出しました。
三岸好太郎が描くピエロも、陽気さとは正反対の面を描いており、作品から受ける怖さや不気味さはどこか共通するものがあるように感じました。
作品実物を生で観た場合と印刷物(またはデジタルデータ)として観た場合に感じる違いは作品によってさまざまですが、この作品は実物の重みや凄みが断然違いました。
藤島武二『黒扇』
今回4点出品された重要文化財のうちの1点。
「美人が多い」との言葉を残したイタリア滞在中に描かれた作品。
作品を間近で見ると筆のタッチは意外と荒く、細かく描き込んでるようには見えないんですが、 全体像として見ると表情や服装など絶妙なニュアンスが表現されているのが不思議でした。
古賀春江『涯しなき逃避』
統合失調症患者の鉛筆画を基にした作品。
鉛筆画の形状だけを利用し、元のイメージの持つ意味は取り除いて作品に仕上げたそうです。
中央を走る水平線のような線と船は作者によって付け加えられたものだそうですが、この要素が作品を引き締めているように感じました。
意味を取り除いた形状から作品に仕上げているので、鑑賞者が作品をどう理解するのかの幅は広め。
上に紹介した作品たちと比べると、楽しみ方は現代アートに近いニュアンスがあるのかなとも思いました。
ブリヂストン美術館展 開催概要まとめ
ブリヂストン美術館は、2019年秋に東京・京橋にて新美術館がオープン予定です。
その建て替え工事につき、現在は長期休館中。
休館中の今だからこそ出品できたという名品の数々を会場で堪能してください。
「ブリヂストン美術館展 石橋財団コレクションの精華」
会期:2018年4月21日(土)―6月24日(日)
開館時間:9時30分から17時(入場は16時30分まで)
休館日:月曜日(4月30日をのぞく)、5月1日(火)
会場:[第1会場] 北海道立近代美術館 札幌市中央区北1条西17丁目
[第2会場] 北海道立三岸好太郎美術館 札幌市中央区北2条西15丁目
福岡、広島でも開催
石橋財団コレクションの展覧会は、国内3つの地域の美術館で一堂に観ることができます。
▼福岡展
「名画が奏でる8つのフーガ 青木・セザンヌ・ルノワール ブリヂストン美術館コレクション展」
会期:2018年7月14日(土)〜9月9日(日)
会場:久留米市美術館
●詳しくは公式サイトへ
名画が奏でる8つのフーガ 青木・セザンヌ・ルノワール ブリヂストン美術館コレクション展 | 久留米市美術館 | 石橋文化センター
▼広島展
「ブリヂストン美術館展 珠玉の石橋財団コレクション 印象派からピカソまで」
会期:2018年10月13日(土)〜12月16日(日)
会場:ひろしま美術館
●詳しくは公式サイトへ
同じコンセプトで全国をまわる巡回展とは違い、各館それぞれ独自の企画によるブリヂストン美術館展となっているそう。
札幌での展覧会が素晴らしかったので、他の会場も行ってみたくなってしまいます。
お近くの方はぜひ足を運んでみてください。