「神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の驚異の世界展」を観てきました!
現在は福岡市博物館で開催中ですが、今後東京と滋賀を巡回する予定の展覧会です。
終盤には工芸品や発明品なども展示されていますが、基本的には絵画が中心の展覧会です。
「ルドルフ2世って誰?」という方でも安心して楽しめる展覧会です。
「神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の驚異の世界展」のテーマ
この展覧会のタイトル、かっこいいですし、観た後なら納得感があるんですが、タイトルを聞いただけでは内容がちょっと想像しにくいかなとも思います。
この展覧会を一言で説明するならば「ルドルフ2世の趣味の紹介」。
ルドルフ2世が愛した画家の絵画や、お抱え学者にまつわる道具などを、ルドルフ2世のエピソードや思想と紐づけて紹介しています。
神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世とは
この展覧会を観ていくと、ルドルフ2世がどういう人物なのかがわかってきます。
ルドルフ2世の思想から絵画が生まれ、工芸品や発明品が集められたわけですが、この展覧会ではその集められた絵画や工芸品などを見ることで、逆説的にルドルフ2世の人物像が見えてくるというわけです。
「ルドルフ2世の思想」→「絵画が生まれる」
「観客が絵画を見る」→「ルドルフ2世の人物像が浮かび上がってくる」
神聖ローマ帝国皇帝=当時のヨーロッパ一帯で最も地位の高い人
ルドルフ2世(1552-1612年)の役職は神聖ローマ帝国皇帝。
そのあたりの難しい話は僕も詳しくないのですが、「神聖ローマ帝国皇帝」を簡単に説明するならば、16世紀から17世紀にかけて(ルドルフ2世の在位期間は1576年〜1612年)のヨーロッパ一帯の最も地位の高い人という感じ。
昔は今のようにヨーロッパの国々が細かく分かれていなくて、ドイツ、オーストリア、チェコ、イタリア北部あたりの地域がまとまって「神聖ローマ帝国」という国家で呼ばれていたようです。
年代によって侵略したりされたりで、その領土は広くなったり狭くなったりしたようですが、その当時のヨーロッパの一帯を支配していた偉い人がルドルフ2世です。
ルドルフ2世はその権力を使って芸術や学問を庇護します。
芸術を愛していた
芸術や学問を愛していたルドルフ2世は、在位中に帝都(首都)をウィーンからプラハに移します。
そしてプラハ城に篭りきりで芸術作品や工芸品を収集するようになります。
宮廷には世界各地から優れた人物たちが集められましたが、画家もまた、その対象でした。
ルーラント・サーフェリーやハンス・フォン・アーヘン、ジュゼッペ・アルチンボルドなど、多数の芸術家が集められ、プラハは文化的に大いなる繁栄を遂げることとなります。
【見どころ1】アルチンボルドによるルドルフ2世像
展覧会のポスターにもなっているのがジュゼッペ・アルチンボルドによる《ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世像》。
のべ67種類の花や野菜、果物で形作られたルドルフ2世像です。
「ウェルトゥムヌス(Vertumnus)」とは花や果実、季節の変化を司るローマ神話の神のこと。
皇帝の権威と威厳を視覚的に表現するためにアルチンボルドはルドルフ2世を神の姿で描きました。
一見すると奇怪で怪物のようにも見えますが、描かれた本人は怒るどころか作品を称賛しました。
それはルドルフ2世像を形作る多数の花や果物が、ルドルフ2世の「芸術や動植物、学問にまで渡る好奇心と収集心」にリンクするところがあったからとも、そういった芸術を理解する教養があったからとも言うことができそうです。
動植物も愛していた
ルドルフ2世は珍しい動植物や新発見の動植物も集めていました。
鳥獣画を得意とするルーラント・サーフェリーに動物相の見本となるような絵画を描かせたり、植物学者のシャルル・ド・レクリューズを宮廷に出入りさせたりしていました。
【見どころ2】サーフェリーによる動物の見本図
ルーラント・サーフェリーの《動物に音楽を奏でるオルフェウス》では、一枚の絵に知りうる限りの動物を描いたのではないかというほど多種多様な動物が描かれています。
ルドルフ2世が所持していた動物園でサーフェリーが動物たちを実際に目にしていたことが絵画に反映されているのではないかと言われています。
ギリシャ神話に登場するオルフェウスは人間だけでなく動物をも魅了する竪琴を奏でました。
このことからオルフェウスの神話は「多数の動物を描く」という目的においてはうってつけの題材でした。
また、「ノアの方舟」も、つがいの動物を1ペアずつ方舟に乗せ助けるという話であるため、動物相の見本を表現しやすいテーマでした。
【見どころ3】ヤン・ブリューゲル(父)による静物画
花の静物画を得意としたヤン・ブリューゲル(父)の《陶製の花瓶に生けられた小さな花束》も数多く種類の花が一枚の絵に収められています。
また昆虫や落花なども細かく描かれ、多種の植物を始め、それ以外にも幅広いジャンルにおいて収集心を持っていたルドルフ2世の性格ともリンクするような作品となっています。
ちなみにヤン・ブリューゲルの父であるピーテル・ブリューゲルの「バベルの塔」の絵画もルドルフ2世が所持していたと言われています。
錬金術も愛していた
錬金術というと怪しげな響きに聞こえますが、これは現代でいう「化学」です。
「金を錬る」。つまり卑金属を貴金属に変化させようとすることと聞けば、「化学」の前身だとも納得できると思います。
実際に錬金術の研究によって硫酸や硝酸などの化学薬品が発見されています。
また、ルドルフ2世は魔術師や占星術師などもプラハに呼び寄せ研究させていたそうです。
今ほど科学が進んでいなかった時代のため、魔術の存在が現代よりも現実的に感じられるものだったということが背景にはありました。
天文学も愛していた
宇宙の真理を追い求めようとしたルドルフ2世は天文学者のティコ・ブラーエやヨハネス・ケプラーなども宮廷に出入りさせていました。
ルドルフ2世の元で地動説についての研究を進展させたブラーエとケプラーは、同時期に研究をしていたガリレオ・ガリレイにその宇宙論を引き継ぎました。
あらゆる珍品が収められた驚異の部屋
プラハ城には絵画を収める部屋とは別に、世界各地から最先端の科学機器、新発見の動植物、珍奇な自然物などが膨大に集められた「驚異の部屋(クンストカンマー)」と称される部屋がありました。
オウムガイで作った杯、イッカクの角(当時はユニコーンの角だと信じられていた)、象牙細工、錬金術の文献、数学や医学用の道具、天球儀や地球儀、陶磁器など、収集された品は多岐に渡ります。
絵画のゾーンを抜けた展覧会の終盤にはこれらの珍品たちが一堂に集められ、驚異の部屋を再現するかのようなコーナーがありました。
ヨーロッパの芸術文化の一大拠点を作り上げた
ルドルフ2世の元には多種多様な動物や植物が集められ、画家たちによってそれらの絵画が創作されました。
またルドルフ2世の元で錬金術や天文学、占星術や魔術なども研究が進められ、その結果プラハは芸術や学問などで文化的に大いなる繁栄を遂げ、ヨーロッパの芸術文化の一大拠点となりました。
【見どころ4】番外編的なお楽しみコーナー
会場を順路通りに進んだ最後には撮影可能なゾーンがありました。
現代の作家が作った立体アルチンボルド
アメリカの現代美術作家フィリップ・ハースによる立体作品。
アルチンボルドの絵画"四季シリーズ"を立体化するプロジェクトとして制作されました。
絵画で見てもインパクトのあるアルチンボルドの作品を立体化。
思わず写真に収めたくなる作品です。
ラーメンズ片桐仁によるアート作品
片パッド
こちらも見た目のインパクトは抜群。
ラーメンズの片桐仁によるiPadケース「片パッド」です(左後ろに少し見えているのが装着されているiPadです)。
作者である片桐仁本人の顔を模したケースは、よーく見ると人間の顔や胴体、腕や脚などによって形作られているのがわかると思います。
アルチンボルドの作風を意識して作ったそうです。
GAIQOTSU
こちらもラーメンズ片桐仁による作品の「GAIQOTSU」。
IQOSケースがガイコツでできているという、ダジャレ的な作品です。
「アルチンボルドメーカー」で自分の顔をアルチンボルド風に(福岡会場限定)
福岡会場には自分の顔がアルチンボルド風になるという「アルチンボルドメーカー」がありました。
画面の前に立つとカメラが自動で自分の顔をアルチンボルド風にしてくれて、シャッターチャンスの時間も用意してくれます。
上の画像は僕の顔をアルチンボルド風にしてもらったものですが、人によって全然違う画像が出てくるのが面白いです。
あなただけのアルチンボルド風肖像画を是非記念に撮影してみてください!
「アルチンボルドメーカー」は福岡会場限定ですが、他の会場ではそれぞれオリジナルのお楽しみ要素を用意してくれるかもしれませんね。
福岡、東京、滋賀で開催
今回紹介したのは展覧会の中でも一部のみ。
他にも見どころはたくさんありますので是非あなたの目で確かめてみてください。
僕が今回観てきた福岡会場(福岡市博物館)は2017年12月24日(日)まで開催しています。
その後下記日程で東京と滋賀を巡回する予定ですので、お近くの方は是非遊びに行ってみてください。
チケットの値段や休館日、開場時間などは会場によって異なるので、公式サイトからご確認ください。
- 東京展
2018年1月6日(土)~3月11日(日)
会場:東京都 Bunkamuraザ・ミュージアム
公式サイト:神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の驚異の世界展 | Bunkamura - 滋賀展
2018年3月21日(水・祝)~5月27日(日)
会場:滋賀県 佐川美術館
公式サイト:まだ用意されていないようです。開催美術館のサイトはこちら→佐川美術館