9月2日の京都公演で千秋楽を迎えたシソンヌの単独ライブツアー「モノクロ」。
だいぶ期間が空いてますが、今年2月に観た札幌公演を振り返ろうと思います。
「モノクロ」のテーマ
「地方のお客様を増やしたい」という思いのもと、全国47都道府県行脚を目標に掲げスタートしたシソンヌの単独ライブツアー「モノクロ」。
全国各地でフットワーク軽く、体一つでコントができるように衣装の着替えはなし、セット・小道具もラジオ一つのみ、照明も地明かりのみ。
チケット代を2,000円という破格に設定し、公演時間を60分という短めに設定しているのもこのツアーのコンセプト。
単独ライブにしては短い時間ですが、コンパクトにギュッと詰め込まれた上質なコントにたくさん笑わされました。
シソンヌの魅力が凝縮された60分「モノクロ」
キングオブコント2014で優勝し日本一のコント師となったシソンヌの持ち味は抜群の演技力。
- 毎年恒例の餅つき大会が中止になった
- 若い女の子がバイトを辞めたいと店長に伝える
どこにでもありそうな普遍的なテーマを超リアルに、時に過剰に演じます。
そこに笑いが生まれるのは、リアリティとありえなさの絶妙なコント設定があるからだと思いました。
リアリティーとファンタジーが同居する絶妙な設定が笑いを生む
餅つき大会に関しては、「毎年本気で餅つき大会に臨み、下積みのように"こねる側"を担当していたが、今年やっと"つく側"の大役を任せられた男」という設定があり、さらに「去年東京から地元に帰ってきて、幼馴染が本気で餅つきをしている姿を見てそこに自分が本当にやりたいことを見出だし、それを披露する今年の餅つき大会で彼女にプロポーズをしようと密かに決意している男」という設定がある。
バイトの女の子に関しても「ずっと引きこもりだった女の子が自分を変えるために始めた初めてのバイト」という設定の裏には「バイト仲間の男の子に初めての恋をするが、初めてが故にそれが恋だと気付いていない」という設定がある。
その設定と演技の中の、リアリティとファンタジーのバランスが笑いを誘います。
じろうのイカれた憑依芸と、長谷川の圧倒的常識人
東京03やかもめんたるなんかも、そういったリアリティと演技力で魅せるタイプですが、それぞれ得意ジャンルや役割、個性が違うように思います。
シソンヌの個性は、じろうさんの憑依芸(ヤバイけどどこかに居そうなおっさん、女装)と、長谷川さんの圧倒的普通な人としてのツッコミ。
じろうさんは色んなタイプの変人だったり個性の強いキャラになりきりますが、長谷川さんはいつも常識人で、じろうさん演じる変人の変な言動に対して、観ている人の気持ちを代弁するような納得・共感のできる一言をポンと置いてくれます。
「確かに!」「わかる!」という納得感が笑いを生みます。
時に演技がリアルすぎる故に一見スルーしそうにもなるじろうさんのおかしな言動の、そのおかしい部分のツボをクッと押してくれて「気持ちいい!」という笑い。
それだけで終わることもなく、さらにもう一歩踏み込んだツッコミ・気の利くワードで笑いが上乗せされることもあります。
東京03飯塚さんの強いツッコミも大好きですが、シソンヌ長谷川さんのツッコミ、その普通さ・器用さがとても好きです。
ここまで長谷川さんのツッコミを褒めてきましたが、それが成立するのもちろんじろうさんの変人憑依があってのこと。
シソンヌのエースはあくまでじろうさんです。
二人がそれぞれ別の役割を完璧に全うしているこのスタイル、クオリティ、実力、今の日本のコント師の中でもトップクラスであることは間違いありません。
フルセットでのライブを観るのが恐ろしい
普段の単独ライブではコントごとに衣装も変えますし、舞台のセットも変わります。
照明を工夫することだってあるでしょうし、コントとコントを繋ぐ幕間映像もライブ全体のクオリティに関わってくるでしょう。
それらが一切なしでこのクオリティ、この面白さ。
フルセットでのライブなら一体どこまで面白くなっちゃうのか、コントの世界に没入してしまうのか。
想像するだけで恐ろしいですが、観てみたくてたまりません。
DVDもいいですが、ライブで体感したい。
シソンヌのフルセットでの単独ライブ札幌公演の実現を切に願います。