福岡を代表する観光地のひとつである太宰府天満宮は現代アートが楽しめる場所でもありました。
福岡に住んでいる方や、福岡を訪れる機会がある人はぜひ太宰府天満宮で現代アートに触れてみてください。
太宰府天満宮アートプログラムの作品がいたる所にある
太宰府天満宮の境内には現代アートの作品が点在しています。
これらの作品は「太宰府天満宮アートプログラム」という太宰府天満宮が行っているアートを発信するプログラムによって作られたものでした。
また、これらの作品群のことを「境内美術館」と称していて、案内所などでそのアートマップを手に入れることができます。
マップを片手にアート作品を探して歩くのは宝探しのようで楽しいです。
『本当にキラキラするけれど何の意味もないもの』ライアン・ガンダー
『本当にキラキラするけれど何の意味もないもの / Really shiny stuff that doesn’t mean anything』
Artist : ライアン・ガンダー / Ryan Gander / 2011
磁石に吸い寄せられたたくさんの金属片でできた球体。
球体の中心にある"磁力"が目に見えないように、神社に祀られている神様も目に見えません。
作品は「目に見えない大切なもの」を表現しています。
浮殿の中に置かれている作品は本来このような姿で見ることができるのですが、現在は前後の扉が閉まっているので覗くのような形で見なければなりません。
外国人観光客の増加もあって、近年はずっと閉じていると案内所のスタッフの方が言っていました。
隙間から覗くこのスタイルも作品の表現の一部かな?とすら思えてきますね。違うんですけども。
『すべてわかった Ⅳ』ライアン・ガンダー
『すべてわかった Ⅳ / Everything is learned, Ⅳ』
Artist : ライアン・ガンダー / Ryan Gander / 2011
"ロダンの彫刻「考える人」が、岩がすり減るほど考えに考えて、「すべてわかって」立ち去った"という物語をもとに作家が置いた作品。
近くで見ると、確かに岩がすり減ってます。
考える人は何がわかったんでしょうね。
『並行宇宙』ライアン・ガンダー
『並行宇宙 / Metaverse』
Artist : ライアン・ガンダー / Ryan Gander / 2010
ヴィクトリア朝に実在した「4代目エジャートン男爵」の功績を讃えた石柱が壊れたもの。
その功績に「美しい極楽鳥を見つけた」という架空の物語を作家が付け加えることで石柱に意味が生まれ始めるという性格悪めの作品。
『この空気のように』ライアン・ガンダー
『この空気のように / Like the air that we breath』
Artist : ライアン・ガンダー / Ryan Gander / 2011
太宰府天満宮幼稚園児の「大切なモノ」75個がこの木の柱の下に埋まっています。
木に掘られているのは、その一つひとつを記号にしたピクトグラム。
大切なモノはもう見ることができないけど、それらの姿やエピソードを自由に想像することができるという作品。
想像力を喚起させることそのものが一番大切だということだそうです。
『歴史について考える』サイモン・フジワラ
『歴史について考える / The Problem of History』
Artist : サイモン・フジワラ / Simon Fujiwara / 2013
プラスチックで作られたように見えるこのイス、実はブロンズ製です。
このイスの近くにブロンズ製の麒麟像があるんですが、その麒麟像はかつて二体あり、一体は第二次世界大戦で武器をつくるための金属供出で失われてしまったそうです。
これから先の未来に金属供出が必要になるような戦争が起きてもこのイスは金属だとバレずにそのまま残るかもしれないけど、戦争は起きてほしくないものですね…。
『時間について考える』サイモン・フジワラ
『時間について考える / The Problem of Time』
Artist : サイモン・フジワラ / Simon Fujiwara / 2013
赤く色がついているのは、だいぶ褪せてしまっているけれど、スプレー缶の塗料でつけた太宰府天満宮幼稚園児の手形だそうです。
「洞窟に残された古代人の手形」と言われたらそう見えてくる?
『信仰について考える』サイモン・フジワラ
『信仰について考える / The Problem of Faith』
Artist : サイモン・フジワラ / Simon Fujiwara / 2013
コンクリートでつくったフェイクの岩に松葉杖が刺さっている作品。
南フランスの「ルルドの聖母」の岩窟には、治癒した人の松葉杖が多く供えられ、さらに祈る人たちを集めているそうです。
「人々が信じさえすればこの岩が信仰の場になる可能性だってある。祈りの場ってそうやってできたのかもしれない」という作品です。
クリスチャン・ボルタンスキーの『ささやきの森』 を思い出すテーマだと感じました。
最新のアートプログラムはピエール・ユイグ
太宰府天満宮アートプログラムの最新(2018年12月30日現在)の作品は2017年11月26日から恒久的に公開されているピエール・ユイグの「ソトタマシイ」。
ピエール・ユイグは「2017年に最も影響力を持った20人のアーティスト」にも選ばれています。
The 20 Most Influential Artists of 2017(ピエール・ユイグは一人目に紹介されています。ちなみに20人の中には日本人の草間彌生も入っています。)
僕は公開2日目のオープン時間から観に行きましたが素晴らしい作品でした。
「庭」として空間全体が作品として公開されている「ソトタマシイ」の解説を書きました。
アートの発信地として機能する太宰府天満宮
福岡の観光地をネットで検索してまず出てくるのが太宰府天満宮。
今回、僕はひとり旅で訪れました。
神社やお詣りにはあまり興味がないのでネットで調べた際に一度はスルーしたのですが、よくよく調べてみると太宰府天満宮の境内に現代アートの作品が多数展示されていることがわかってきました。
実際に足を運ぶと、福岡の現代アートの発信地として精力的に活動していることがわかりました。
また、1100年以上前に建てられた太宰府天満宮に祀られる菅原道真は、「学問の神様」としてだけでなく「文化の神様」としても崇められていることから、アートとの繋がりがルーツにあることもわかります。
1100年以上の歴史の上に今まさに作られていくアートの歴史。
福岡を訪れる際はその歴史の1ページを実際に体験してみてください。