ハライチ岩井勇気の「面白い漫才を作る才能」が凄すぎます。
本人の言葉も引用しながら、その才能の凄さを解説します。
ハライチは漫才の評価が高い
ハライチはM-1グランプリの決勝に4大会連続*1で進出。
今年のM-1グランプリは準決勝で敗退してしまいましたが、準決勝でもかなりの狭き門です。
数字だけで表しても総エントリー4094組中の30組に入ったということになります(過去4年は決勝進出なので10組に入っている)。
テレビで活躍するお笑い芸人の高齢化が進む中、20代前半から平場でしっかりと結果を残してテレビで活躍し続けているハライチですが、実は漫才の評価も高いということがわかっていただけたでしょうか。
新しい漫才のスタイルを発明した上で、そこに執着せずさらに新しいステージへ
ハライチの初期の漫才を知っている方は「ノリボケ漫才」のイメージが強いと思います。
しかし近年は全く別のスタイルの漫才を作っています。
「ノリボケ漫才」という新しい漫才のスタイルを"発明"してM-1グランプリの決勝に進出。
その斬新なスタイルの漫才でテレビで活躍するきっかけをも掴みました。
しかしハライチはそこに執着することなく、ノリボケ漫才とは違う新しいスタイルの漫才を作り、その新しい漫才で2015年、2016年と2年連続でM-1グランプリの決勝に進出しています。
「ノリボケ漫才をたまたま発明して、それが評価されただけ」というようなまぐれでは決してなく、スタイルを変えてもクオリティの高い面白い漫才を作れるということです。
ハライチは漫才作りの基礎力が高いのです。
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ハライチの漫才は岩井勇気が作っている
ここまでハライチの漫才について書いてきましたが、ハライチの漫才は岩井勇気が作っています。
漫才を演じる能力や見た目などもあるので、澤部さんが「ハライチの漫才の面白さ」を担っている部分ももちろん少なからずありますが、台本を作っているのは岩井さんです。
学生時代からの友達でもあることから、岩井さんは澤部さんが最も面白く見える(結果的にコンビで表現する「漫才」が面白く見える)漫才の台本を作っているのです。
それに応える澤部さんもすごいし、それを見越して台本を作る岩井さんもすごい。
バラエティ番組での二人を見ていても知り得ないところですが、ハライチの漫才は二人がそれぞれの持ち場を全うすることで飛び抜けた面白さを実現させているのです。
岩井は思いつきで面白い漫才ネタを作る「漫才作りの天才」
ブラッシュアップしてるコンビじゃないからさ、思いつきじゃん。思いついたら良いネタできんだよ、俺って。
思いついたら良いネタできるわけだから、もうギャンブルじゃん。
だから今年上がれながったとしても「はぁ?なんでだよ!」とか「不甲斐ない」とか「悔しい」とか、そういう気持ちじゃなくて「アンラッキー」っていう(気持ち)。
2017年11月23日放送のラジオ番組「ハライチのターン」で岩井さんが語った「M-1グランプリ2017準決勝敗退の感想」です。
ラジオ番組での発言ですし、半分ボケのようなノリで話してはいましたが、これが本当なら岩井さんは漫才作りの天才です。
M-1グランプリ4大会連続決勝進出という結果だけでも天才と言っていいかもしれませんが、この発言が本当なら想像の上をいく天才です。
この凄さがわかるでしょうか。
お笑いに詳しくない方のためにも説明します。
芸人は賞レースに「ドーピング」して臨む
M-1グランプリやキングオブコントなどのお笑いの賞レースに挑む芸人は、年に一度の大会に向けて一年かけてネタをブラッシュアップしていきます。
吉本のように事務所が劇場を持っている場合は年間何十回、何百回と同じネタを客前で披露し、ウケなかったくだりを改善することでネタのクオリティを上げていきます。
事務所が劇場を持っていない芸人も、それぞれの方法で「客前でネタを披露する機会」を作り、ウケたかどうかでネタを改善していきます。
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オードリーの場合
オードリーはケイダッシュステージという事務所に所属しているため事務所の劇場がありません。
そのため下積み時代は「そっくり館キサラ」というショーパブの舞台で漫才を磨き続けてきました。
オードリー若林さんは自分のことを「漫才の才能がない」と言っていて、ショーパブの舞台で同じ漫才を何百回も披露し続けて、「ウケた箇所」を採用して「ウケなかった箇所」を改善する、という工程を繰り返し続けて初めて賞レースで通用するネタのクオリティになったと語っています。
才能があれば一発で面白い漫才を作れるが、「才能がない」から何百回も同じネタを人前にかけてブラッシュアップし続けたということのようです。
ショーパブなどの劇場では漫才を披露していましたがテレビで漫才を披露する機会は少なかったので、一般の人や審査員は賞レースの舞台で初めてその磨き抜かれた漫才を見ることになります。
漫才をやる方はショーパブでブラッシュアップして完璧に仕上げてきたネタですが、観る方は初めて観る。
「そんなズルいことやったらそりゃ面白いって思うよね」というのが若林さんの理論で、この行為を若林さんはドーピングと呼んでいます。
関連記事:オードリーが準優勝翌年のM-1グランプリに出場しなかった理由(若林談)とカミナリの葛藤 - 裸眼日記
トレンディエンジェルの場合
トレンディエンジェルも同様に劇場でネタをブラッシュアップしました。
その手法はオードリーと少し違って、「複数のネタの面白いくだりだけを集めて一つのネタにする」という手法。
詳しくは前回の記事に書いています。
オードリーよりもドーピング感はさらに強い方法ですが、「一発勝負の本番の場で面白いのが正義」という世界なので、その裏ではいくらドーピングしてもいいわけです。
芸人たちはそれぞれの形で最大限のドーピングをして賞レースに挑むものなのです。
ドーピングをしない岩井勇気
そんなドーピング当たり前の世界で、ハライチはドーピングをしません。
岩井さんはパッと思いつきで作ったネタでM-1の決勝までいってしまうのです。
澤部さんは毎年テレビ出演本数ランキングの上位にランクインする芸人であり、岩井さんもお笑いに加えてアニメなどの別分野でも活躍しています。
吉本芸人なら売れていても舞台に立ったりもしますが、ハライチは舞台にしょっちゅう立って漫才をするようなタイプの芸人でもありません。
ネタをブラッシュアップする機会がない(または機会を作る気もあまりない)と言った方がいいかもしれません。
それでもハライチは賞レースで勝ち上がる。
それはひとえに、岩井勇気の漫才を作る才能がすごすぎるということの証明でしょう。
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M-1グランプリ2018で「ラッキー」は出るのか(追記 2017/12/07)
2分弱喋らなかったのにあんなに上位でどきっとしちゃったよ。
— ハライチ 岩井勇気(cv.岩井勇気) (@iwaiyu_ki) 2017年12月3日
思いつきでネタを作る岩井勇気。2017年のM-1グランプリは「アンラッキー」で準決勝敗退でした。
その後の決勝への敗者復活をかけた戦いは、スーパーマラドーナ、三四郎、さらば青春の光、ニューヨーク、南海キャンディーズなどなど、誰が決勝に行ってもおかしくないレベルの芸人たちの中で、結果は惜しくも2位でした。
「岩井さんは2分弱一切喋らない」という奇天烈なネタで2位。
ボケ数が多い方が有利とも言われる賞レースでの大胆なネタ選び。
天才がゆえに成せることです。
漫才作りの天才・岩井さんが作ったネタで、ハライチがM-1グランプリ優勝の栄冠を勝ち取る日を待ち望んでいます。
*1:2011〜2014年の大会休止期間をまたいで2009年、2010年、2015年、2016年の4大会。