僕がやっているバンドcolor chordのミニアルバム『くらし』が2016年3月9日に全国発売になりました。
バンド初の全国流通。
僕個人としても初めての全国流通です。
バンドが動き出してから丸8年、バンドメンバーと仲間内の5人だけでレーベルを設立し、全国流通でCDを発売しました。
なぜ今このタイミングで全国流通という手段を選んだのか。
その理由と方法を、バンドの歴史や状況も踏まえつつ書こうと思います。
インディーズバンドの内情や、全国流通の仕組みに興味がある方は是非ご覧ください。
全国流通ってなに?
全国流通というのは、CDを全国の大手CD屋さんで買えるようにすることです。
大手CD屋さんとはタワレコやHMV、ヴィレッジヴァンガードやディスクユニオンなどですね。
これはおまけですが、AmazonやiTunesなんかでも一括で取り扱ってくれたりもします*1。
僕らのようなインディーズバンドは、全国流通をしていないバンドの方が多いです。
店舗に営業をしたり実際に商品を納品したりする流通業者(問屋のようなもの)を介さなければ全国流通はできないからです。
流通業者とバンドが直接やりとりをする場合もありますが、多くはバンドが所属するレーベルが流通業者とやりとりをします。
バンドが所属するレーベル or やる気のあるバンド → 流通業者 → 全国のCD屋さん
というのが全国流通をする際の流れです。
それ以外の多数のインディーズバンドが取っているCD販売方法が、ライブ会場での直接販売。
それに加えて自分のバンドのサイトで通販をやったり、個人経営のCD屋さんやウェブショップでCDを取り扱ってもらうという方法もあります。
これが全国流通と、そうでない場合のCDの売り方です。
なぜ今、全国流通をしたか
まず最初に、なぜ今CDを全国流通でリリースしたのかというと、シンプルに、全国流通というアイディアが出てから最短のタイミングが今だったからです。
林修先生の「今でしょ」は物事の真理なんじゃないかと僕は思っている節があるんですが、やった方がいいこと、やりたいことがあったら、それをやるタイミングは今なんじゃないかと思うのです。
小さくちまちま活動していても、チャンスがいつやってくるかはわかりません。
それならチャンスを作ればいいと思ったんです。
そう思い、レーベルを立ち上げて、自主レーベルで自分のバンドのCDを全国流通しました。
それでも物事にはタイミングというものがある
この2016年3月というのがcolor chordにとって全国流通でリリースするタイミングとしてベストかというと、全然ベストではなく、むしろ悪いくらいでした。
完全にタイミングを逃してしまっていた。
ではいつがベストだったかというと、それは2013年の秋ごろだったと、今となっては思います。
2013年8月、color chordはUSインディーバンドDawesのカバーコンペティションで優勝をし、アメリカを中心とした北米圏でちょっとした賛否両論を巻き起こしました*2。
DawesのオフィシャルFacebookページのコメント欄で酷く罵倒されたり震えるほど絶賛されたりしました。
どちらも強い感情でうれしかったです。
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2017/06/30追記
その時のことを詳しく書きました!こちらもどうぞ。
追記終わり
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札幌の僕らの知り合いのバンドマンやその界隈の方たちにも「color chord、やってんな」という印象を与えられたし、「世界規模の大会で優勝」という情報はインパクトがあります。
その鮮度が残っているうちに、バンドの勢いが感じられるうちに、遅くても2013年内に新譜を出しておけばタイミング的にはよかったのだろうなと今となっては思います。
でもそういうことって過ぎてからじゃないとわからない場合が多くて、実際今回リリースをしてみてから「今バンドの勢いないな!」というのを実感したりしています。
そうです。ものすごくぶっちゃけています*3。
リリースのタイミングが大事ということを勉強できたのも、今回のリリースの成果だとすら思っています。
ヤバいでしょ。こんな初歩的なことすら人って忘れてしまうのです。人は悲しいくらい忘れてゆく生き物なんです。
それでも後悔はしていなくて、このタイミングでリリースをしてよかったと思っています。
タイミングが大事だということを勉強できたのと同時に、リリースに付随する様々なことを当事者として経験することで身をもって学ぶことができたからです。
そして色々な可能性が広がっていくのを感じることもできました。
そもそもなぜ「全国流通」を選んだのか
タイミングの話ばかりしてしまいました。
全国流通という手法を選択したそもそもの理由について書きます。
全国流通でリリースした目的は、「これで一発当ててやろう」なんていう夢見がちなものではありませんでした。
もちろんドカンと売れたらそれはうれしいけど、そんな理由なく急に売れるなんて思えない。
売れてる人は何らかの理由があるはずです、音楽が良いということ以外に。
業界に詳しくて、マーケティングに精通していて、各方面にコネがあるなら別ですが、そのすべてを持たざる僕たちが全国流通をしても売れるとは思えません。
それでも何かを変えたかった。
何かを変えるために無理くり全国流通してみようじゃないか!と思いました。
バンドをなんとなく続けていって、誰かがバンドに何かをしてくれるのを待っているだけだと、それはいつ訪れるのかわからないなと思ったんです。
とにかくバンドが外に広がる可能性のある大きな手を打とうと思いました。
自分から仕掛けていって失敗したら、失敗した分だけ勉強になるし、また次挑戦したときにもうちょっとうまくやれるんじゃないかと思ったんです。
バンドと世間の繋がりに対するカンフル剤としても、バンドという生き物自体への刺激としても、何か大きなことをしなければならないと思ったんです。
全国流通をしたら、失敗と成功がたくさん舞い込んできた
実際全国流通をするにあたって色んなことに挑戦して、たくさん失敗しています。
その度にたくさん勉強になりました。
流通会社の人と100通以上メールをすることで、得意じゃなかったビジネスメールがどんどん上手くなっていきました。
失礼なメールを送ってしまったこともありましたが、担当の方のメールを真似することによって基本的なメールの作り方を学び、慣れてきた頃には形式にこだわりすぎるよりも気持ちが大事だということがわかったりもしました。
お店への挨拶回りも20店舗以上行きました。
最初は緊張して伝えるべきことを伝えきれなかったんですが、徐々に緊張を楽しめるようになってきて、笑顔で相手とちゃんと会話をすることが大事だということがわかってきたりもしました。
CDジャケットや歌詞カードのデザイン、フライヤーやポスターのデザインなどをすることによって、全然使えなかったイラストレーターがめきめきと使えるようになっていきました。
そして決断することが前より得意になってきました。
リリースに向けて決めるべきことがたくさんあるので、決断の決め手となる情報を収集したり、メリットデメリットを天秤にかけたりしました。
決断することは今も怖いですが、色んな決断をすることによって以前より少しは得意になってきたような気がしています。
何もない状態から見よう見まねで挑戦することで、失敗と気付きを繰り返して少しずつ前進してきました。
某有名フリーペーパーや北海道の某有名企業からバンドのアカウントに急にメールが来たりもして、自分の力だけでどうにかできる範囲外からのうねりを感じることもありました。
CDジャーナルから急にメールが来て、今月号に小さく載せてもらったりもしています。
世の中と繋がることの可能性を感じた
少しずつですが、北海道滝川市の実家でちまちま曲を作っていただけだったcolor chordが、世の中との繋がりを広げつつあることを感じています。
そういった広がりを持つことによって、今まで届かなかった人にまでcolor chordの存在を、音楽を知ってもらうきっかけになるんじゃないかと思いました。
全国流通をすることによって、バンドと世間との繋がりを広げていき、color chordを好きになってくれるかもしれない人により多く、より広く響かせたいというのもねらいでした。
そしてそれは、まだまだこれからやっていかないといけないなと思っているところです。
全国流通をする方法
「全国流通した」と、さも簡単にできるかのように言っていますが、流れとしてはとてもシンプルです。
音源と資料を流通業者に送るだけです。
そこで審査に通れば流通はできますが、そこから最低限決めることだとか、最低限やらなきゃいけないこと*4だとかでなんだかんだ大変、ということです。
この「なんだかんだ」が結構死ぬほど大変です*5。
その覚悟さえあれば割かし全国流通自体のハードルは低いと思います。
僕は平日の仕事が終わってからリリースに関する作業(結構広義だけど)を4,5時間やって、4,5時間睡眠、休日はその分たっぷり寝るけどやっぱり4,5時間作業する、というのを100日くらいやりました。
これにはミュージックビデオ関連のこと*6とかデザイン関係、リリースツアーのこと*7とかも含まれているし、そのすべてを自分でやろうとしたちょっと特殊なケースなので、もうちょっとお金をかけて人に依頼したりすればある程度楽もできると思います。
でも僕みたいに全部背負っちゃうとマジで地獄です。
自主レーベルだと自由です
ちなみに、地獄の対価として僕らは自由を手に入れました。
当事者以外の大人が関わっているリリースには色んな制限があったりすると思いますが、僕らは何の制限もなく好き勝手やっています。
大人がお金を出してくれる場合は制限がある代わりにお金をかけてレコーディングしたり、CDのパッケージを豪華にしたり、宣伝をしてくれたりするかもしれませんが、僕らはお金がない代わりに制限がないので大事なジャケットの画像をご飯にしたり、ミュージックビデオを7本撮ったり、レコーディングに1年半かけたり好き勝手できます。
これは良し悪しなので色々考え方はあると思いますけど、自由なのも辛くて楽しいです。
逆に制限された環境でやったことはないので、制限されるという経験をしたくもあります。
お金を出して僕らを制限してくれる大人の方がいたら是非お声をかけていただきたいです(わがまま言うと思いますが話し合いましょう)。
おわりに
全国流通をしたインディーズバンドの内情というか、くすぶってる奴の葛藤を暴露しただけのような気もしますが、全国流通の意義と方法はなんとなくわかっていただけたでしょうか?
このままじゃいられない!何かを変えたい!というバンドやミュージシャンは、全国流通という方法でもがいてみたら何か変わるかもしれませんよ。
もし周りから見てあんまり変わらないように見えても、たくさん頑張れば自分が変わります。あと、結構面白いです。
最後に、ここまで書いたから宣伝だけさせてくださいね!
気になった方はCD買ってください!
あれだったらミュージックビデオだけでも観てってくださいね!
*1:このあたりはちょっと頑張れば個人でもできます。逆にタワレコなどは頑張っても個人じゃほぼ受け付けてくれない。
*2:本当にちょっとですがDawesファンにはある程度知られたのではないかと思われます。
*3:ちなみに音楽的成熟度とライブの完成度は今が一番高いんですが、それとバンドの勢いはまったく別物です。バンドの勢いは「周りからバンドがどう見えているか」という部分が大きいです。
*4:質問したら全部流通業者の人が教えてくれるので何も知らなくてもダイジョウブ!
*5:最低限やらなきゃいけないのはCDを作ること(レコーディング、ミックス、マスタリングをした音源とジャケットデータと歌詞カードデータ、帯データなどを用意してCDプレス業者に発注。超大変)、商品番号や価格・発売日の設定、業者によってレンタルの有無だとかiTunesの価格を決めたり細かい決めることたくさん、キャッチコピーとか宣伝系の文章作成、店舗に事前に配るサンプルCDとその資料作成、などなど諸々。それ以外にレーベルとしての仕事が色々あって、フライヤーやポスターの制作はもちろん、宣伝するためにメディアに資料送りまくったり、サイト作ったりなんだかんだします。
*6:今回のアルバムは7曲入りで7曲ミュージックビデオが特典でついてくる、というものでした。そして7本すべてをレーベルのチームで制作しました。ちなみに僕はほとんどの監督と編集をやりました。
*7:2日間行われた東京公演のうち1日は自主企画だったため、会場を押さえて出演バンドにオファーをして、タイムテーブルの作成やチケット代の設定、フライヤーの制作・発注、飛行機のチケットの予約などなど、なかなか大変でした